前沢牛(岩手県)
前沢牛の特徴
前沢牛は岩手県の奥州市前沢区で育てられ、なおかつ前沢牛としての規準を満たした枝肉のことです。
品種は黒毛和種でありますが、先述した地域で飼育された時期があれば牛の出生地域は問われません。ただ、子牛の時にどこの地域で出生したのかの証明ができることが、ブランド名を使用する上での規準となっています。
出生地域の証明に加えて、食肉として加工された後にもトレーサビリティが適応されているのも前沢牛の大きな特徴です。出生時の証明とトレーサビリティを行うことは、産地偽装のリスクを限りなく低くし、ブランドの信頼性を高める努力の一環として行われています。また、JA岩手によって販売されなければ前沢牛ではないというのも特徴の1つでしょう。
肉質としては多くのブランド牛がそうであるようにA4ランク以上、もしくはB4ランク以上の格付けが行われています。それゆえに、霜の降り具合や肉繊維のきめ細やかであるため食感はやわらかく、脂身の香りは濃厚で独特の風味を醸し出します。
前沢牛の歴史
岩手県における食肉生産の歴史はそれほど長いものではありませんでした。それは岩手県が農耕が盛んな地域であったので、牛は食用としてではなく農耕における道具の1つとして使用されてきたからです。
しかし、時代の変遷と共に農耕に牛が使われなくなってきたことから、昭和中期を境として牛を肥育して食肉用に生産する流れが盛んになってきました。農耕用の牛であったことから当初は肉食としての価値をそれほど見出されなかった前沢牛ですが、素牛として但馬牛としまね和牛を効果的に交配し品種改良を繰り返すことによって高品質な肉牛の育成を成功させました。
また、前沢牛の品質改良の歴史においては生産者同士の関係性も大きく影響しており、牛を飼育する畜産家が肉質を高めるための情報を常に交換し、一体となって飼育ノウハウを蓄積してきたことが高品質な前沢牛を形作った要素の1つです。
その後、品質改良された前沢牛は全国枝肉共励会が行う審査において名誉賞を受賞に至るほど、その高品質な肉質が証明されている肉牛となっています。