肉の旨さを決めるカッティングと火入れの重要性
成熟肉はその調理方法によって味が左右される。
肉牛は食肉とされる過程において、ある一定の保存期間をおいてから製品化されることが多いものであります。それはなぜかというと、そのような保存期間が肉を成熟させて風味や食感を増してくれるとされているからなのです。
ただそのような牛肉の成熟は、通常大きな肉牛の塊の状態で行われるものですから、成熟期間を満たした牛肉は各部位によって切り分けられていきます。この過程がカッティングと呼ばれる段階です。そして、ある程度カッティングされた牛肉は焼いて調理されますが、その調理は火入れと呼ばれ調理後の肉の味に大きな影響を与える工程だとされています。
牛肉、特に成熟肉の旨さは基本的にこの二つの過程であるカッティングと火入れによって決定づけられていると考えて良いと言われています。ですから成熟肉はその調理方法によって味が左右されてしまうのです。
それゆえに、成熟肉を美味しく食べるためにはこのカッティングと火入れについての知識の深化は必要不可欠であります。その知識の深化のために、ここではそのカッティングと火入れについてお話しましょう。
肉の形成段階においてカッティングは最重要項目。
肉は牛肉という大きな個体から幾つもの部位がとられることになります。ですから、熟成された牛肉はまず大まかな部位にカッティングされることになるのです。
この大まかな部位をカッティングする過程はプライマルカットと呼ばれ、筋繊維が同じ種類の部位によって切り分けられるのはもちろん、その後の調理段階でどのような使用をされるのかなどを想定して処理される工程になります。プライマルカットの良し悪しによって、その後のお肉の調理工程に大きな差が生まれますので、意外と重要な部分であるのです。
そして、プライマルカットで大まかに切り分けられた肉の塊はさらにリテールカットと呼ばれるカッティングが行われるようになります。リテールカットではこれから作るのがどのような料理かによって、その切り方が変わります。
リテールカットの切り方の種類としては、ステーキカット、ソテーカット、ダイスカットなど様々な種類が存在しています。ステーキを焼くのにソテーカットでは不都合があるという具合に、ステーキにはステーキカット、焼肉にはソテーカットなど、切り方によって適した料理があるのもカッティングが旨さを決定する大きなポイントでもあるでしょう。
火入れはシンプルだが奥が深いものである。
そしてカッティングに次ぐ重要な調理工程が、火入れという加熱調理の過程であります。肉は焼いて火が中まで通り殺菌さえできればそれでいいのではないかと思われる方も多いかもしれませんが、実は火入れの加減によって味を大きく変化させます。
それはお肉が火の入れ加減を時間差をつけて強くしたり弱くしたりすることで、肉の中に旨味成分である肉汁を閉じ込めることができるからです。それゆえに、上手く火入れするのと下手に火入れをするのでは、そのお肉の旨さに天と地ほどの差がうまれてくることになるでしょう。
ただ肉に火を通すだというシンプルな工程であっても、それを行う調理者にはかなりの熟練した技術が求められますのでとても奥深いものであるのです。
最高の調理方法は、カッティングに合わせた火入れ。
このように、たとえ同じ肉の部位であったとしても、その調理方法によっては全く違ったものになってきます。そのようなことからも、成熟肉の旨さを最大限に味わうためにはカッティングに気を付け、そしてそのカッティングの形状に合わせた適切な火入れの方法を行うことが大切になってくるのです。